桜石という物には、我々は、先入観を持って見ています。
その一つが、粘板岩ホルンフェルスにしか、生成しないと言うことです。その理由は、粘板岩中にはアルミナ分が多いと言うことで、アルミナ分の少ない砂岩には、生成しないはずなのです。
この事には、もう一つ前提があって、桜石が鉱物結晶であり、花崗岩の接触熱変成鉱物で生じたと言うことです。
ここで、この前提が間違っていたら、どうなるでしょう。
私は、亀岡湯ノ花温泉の道路工事の折、露頭を見たときに感じたのです。この産状は、化石床に似ていると。正直なところ、それまでは、桜石が鉱物であることに、何の疑問も持っていなかったのです。それ以降、桜石が、何らかの化石ではないかと、その証拠を捜していたのです。
若い頃は京都に住んでいたので、良く大文字山に通っていました。そこには、粘板岩ホルンフェルスではなく、紫灰色のホルンフェルス中にも見つかりました。ただ、この石を砂岩ホルンフェルスとは呼ばなかったのです。この石は、両者の中間くらいではないかと思いますが、どちらかというと、砂岩ホルンフェルスとした方が良いのではと思っていました。しかし、そうすると、前提が崩れるのです。それで・・・・・・単に、「ホルンフェルス」と。
もう一つの疑問は、粘土ですが、字のごとく粘るため、ほとんどの成分が粘土鉱物と勘違いされているようです。しかし、実は、石英と、粘りの原因である有機物とで、出来ています。案外アルミナ分は少ない様です。
と言うことで、今回見付けたのが、古琵琶湖層の礫岩層に含まれる礫にあった、完全な砂岩ホルンフェルス中の桜石(採集したのは、O君です)です。
鉱物であれば、このような物でも、「菫青石・インド石仮晶雲母類」と言う事になるのでしょうが、それでは、成因の辻褄が合いません。と言う事で、成因の見直しが必要なのではないでしょうか。
桜石の採集と言えば、六角の綺麗な花弁状の物しか、目に入りません。今まで、不完全な物、汚い物と、捨てられていた、不完全とされている桜石に、その成因を示す物証があると思います。